「あめつちの日々」に登場いただいている尾久彰三さんについて書きます。
インタビューを撮るにあたり、素人の私にわかるように沖縄の陶器を教えていただけないかとお願いしました。そんなおおざっぱなお願いを快諾してくださったのが、NHK「骨董紀行」指南役・尾久センセイこと、古民芸研究家・尾久彰三さんです。
数ある本を執筆され、日本民藝館学芸員、大学講師を退任後も文化的な活動をされていらっしゃいます。尾久先生に伺ったことで印象的でしたのは、お母様が好まれていた陶器たちをご幼少の頃より使用されていたということ。「美しいものが好き」というお好みが会ったすぐにわかる、個性的でハンサムな思想をお持ちだと思いました。
NHKの樹木希林さんとの共演「骨董紀行」を見た事がない方の為にこちらに書かせていただきますと、尾久先生のストレートなもの言いは気持ちよく、素人にもわかるよう骨董や民藝を難しくせず教えてくださいます。
松濤美術館で開催された玄人向けの座談会に登壇された会も拝見した事がありますが、遠慮なく自論をお話される姿は壮快でありました。そして、どの環境でも同じですがなぜか先生がいる会場には笑いがおこる。そんな先生です。
「あめつちの日々」では何故、尾久先生のインタビュー撮りに伺ったかというと、以前、ある会にて松田米司親方と二人で登壇された事があると聞きつけたというのが大きな理由でもあります。
その時(聞いた情報なので過大表現である可能性もあるのですが)、私にとってはとても魅力的な事件が起こったようなのです。会場まで電車でいらした先生は、道中上着を電車に忘れてしまい「ああ、ああ忘れた!」参ったな〜とかいいながら、その日に使うパワーポイントなどの資料までをも一切忘れ、手ぶらで会場入りされたそうです。
松田米司親方が爆笑で教えてくださった珍事件です。そして当時若かった米司親方に「話がうまいね〜〜」とたくさん褒めてくださったと聞きました。
いまお二人に会った私は、その当時はそこにいなかったけれどそのシーンが目に浮かぶようです。
尾久先生と松田米司親方は、陶器を(美しいという事を)難しくせず、自分なりに感じるという事を重んじるという点がお二人の共通のように思っています。
生きている生活の時間の中に、美しいものがあるだけで、お話が楽しくなったり、お酒が美味しくなったりと。そんなに人生悪くないと思えるような、大物になったような気持ちにしてくれる… 私はこの二人の先生方にそれを教わったと思っています。もっともっと話をきいてみたいなと思ってるところが本音です。
映画の中では「陶器のうつし」ということが出てきます。素人からみたら写しって?と思うはずです。いろんな事を知る必要があります。2020年オリンピックエンブレム問題の例のうつしとは訳が違います。歴史の永い陶器であるがゆえの「写し」。
尾久先生の「生まれた大地からとる」技術という教えは素敵だったと思っています。
ありがとうございます。