小津映画の美術陶器

「秋刀魚の味」ついて

1962年製作「秋刀魚の味」を公開した翌年、小津監督はご自身60歳の誕生日に他界されたといいます。
なのでこの題は遺作となったそうです。

 

国外にて私を日本人だと知る方々からよく「オズ」といわれます。
日本映画というと今でもOZU、KUROSAWAなのかと思う瞬間です。

 

小津監督の作品に触れるといろいろな見所がでてきます。「秋刀魚の味」はカラー作品です。

お色のつかいが素晴らしい。色を与えられた映画人の喜びが映像に現れているかのようです。

何ひとつ現場で諦めていないような画つくり。

 

場面に食卓がでてきます。また小料理屋、自宅、居酒屋、バー、状況は色々なシーンがあります。

食卓や床の間のしつらい、日本建築の和室や庭、街角や通り、美しいものばかりです。

机上には酒器や器、正油さしなどが並んでいます。

シーンごとに色々を配置した小さなそれらは赤や黄色、緑が画面に華をそえ、現場での考慮されつくした跡を感じます。

 

よくみると、いろんな陶器や磁器が使われています。和室の料理屋の背景にある花生けをみつけました。

主人公の肩ごしのそれは、どうみても沖縄陶器の形のようで、河井寛次郎さん風でもあり、点うちであり….

 

恥ずかしながら「あめつちの日々」での尾久彰三氏インタビューでの品物と似ています。

歴史ある陶器だからできるこんな贅沢な偶然。

北窯でクライヴ・ボウエン氏にお会いした際、小津監督作品がお好みだとわかりました。

ちょっとした、ささやかで、強い、美しさを共有されているのかもしれません。