東京・目白の「永青文庫」へはじめて伺った。
良き天候の中、目白の町を歩くこと数十分。よき佇まいの建物が樹々の中に現れる。ちょうどよい陽に照らされて、入館前にすでに来て良かったと感じる。
目的は秋冬展示である永青文庫コレクション・仙厓義梵(1750~1837)の書。中山喜一朗氏(福岡市美術館副館長)が監修された展示。
コレクションの存在はあまり知られていなかったらしく、全作品を改めて調査しその成果を4期にわたって一般公開するというものだった。
作品の説明を読みふけつつ、書の意味をよみつつ、仙厓が人々に説いた禅を知ることができる。
墨絵で取り上げられる画材風景を使い、そこで自分を書くということをやってのける。「竹の中の賢者7名」のパロディとまではいかないけれども、声を出して笑ってしまうような画は、特に私にとっては大事な発見だ。独特の固定概念のない画、堂々と発表し、しかも楽しんでいるような。おおらかで温かい。大きさが気持ちよい。
仙厓義梵がこれらを描いていた頃の年齢が人生後半だったことを知る。その頃になったら、自分もこうなっていたもの…、生きていたら。
仙厓愛用の朝鮮・安南茶碗の展示もあった。決して煌びやかなものでなく素朴で温かみのあるものを愛されたということが納得であり微笑ましく嬉しかった。やっぱり、とすら思う。
熊本、細川の殿様が、このような良品をコレクションされた気持ちもなんだか嬉しい。作品写真をここには提示はできないけれど、仙厓義梵をどこかで見てほしい。みたことがあるような、近所でそういう画を書いてみせてくれたお坊さんがいたような、そんな豊な時代があった。それでいて作品をみながらみんなで笑っていたような、前の時代の人々が持っていたかつての記憶を想像できる。しかし、書ではその強い想いをしっかりと提示もしている。ゆる面白い画だけではない。
それで、もうひとつ。作品の展示ケース下にそおっと置かれてある大きな長持の数々。なんと素敵なこと…。細川殿へのお嫁入りの時にもってきた長持とあったけれど。それはそれは、いろんな品物が入っていたことでしょう… 気になるけど。