大阪リーガロイヤルホテル「リーチ・バー」の続きで「大山崎山荘」へ。
京都からJRで15分ちょっとの山崎は静かで小さな町だった。アサヒビールの美術館として開館して20周年になる「大山崎山荘」(登録有形文化財)は、5500坪にも及ぶ庭園のなかに佇んでいた。この建物は関西の実業家・加賀正太郎が大正から昭和にかけて建設した英国風の山荘で、今では氏の美術品とアサヒビール初代社長・山本為三郎のコレクションが共に展示されている。展示品も山荘そのものも、かつての日本にこだわり熱いハイクオリティ人がいたと理解できる。
入り口すぐには百年の時代をもつ太い無垢の木の梁、そのそばの暖炉前にはゆったりと皮ソファが囲み、英国趣味と日本の融合の山荘のはじまりを予想できるアプローチ。入り口早々オーナーたちの創作への期待が高まる。無垢木材の贅沢さからは加賀氏は林業を手がけていた木への眼をお持ちだということもわかってくる。
重厚感ある石のサンルームは、かつては植物が置かれ応接間として使えれていた空間。壁面は龍山石という黄土色をした柔らかい石材で、これは兵庫県西部などから産出する石。京都の寺町通に面した京極小学校の玄関や旧明倫小学校(現・京都芸術センター)などでも使われていて、風合いが独特の温かな表情をつくるように思える石である。
居間には大きな暖炉がありそこにはめ込まれた石が目をひく。細かな彫刻は中国・後漢時代に盛行した石造の浮彫や線刻で画像を表わした壁画だろうか。こういう石の大胆な使い方に学ぶこと多し。ユニークな組み合わせだ。
食堂では太く存在感ある一本柱が目を引き、エレガントな照明と調合され独特の雰囲気をつくっている。ひとつひとつどれをみても温かい。続く階段も隅々まで職人の技術が施されており、鳥柄のステンドグラスも黒く輝きあるカーブある手すりも、何をみても装飾が持つ美意識が見受けられて自分勝手に心が踊る。
最後は桂川、宇治川、木津川と男山をのぞむ壮大なテラス。素焼きの素材感あるスクラッチタイル、むき出しの柱、バーナード・リーチや濱田庄司の装飾タイルを眺め、「いつまでもここにいる事ができるなあ」と憧れを持って立ち尽くした。しかし実際には夏の暑さに負けて、そそくさと冷房ある室内に戻った自分であるけれども…。
企画展の展示品では、ハンガリー 王・王女文鉢(1783年)、ペルシア 獣文鉢たちの表情がなんとも可愛らしく、一度はこれらの国に行ってみるべきなのではないかと思った。これまで欧州でも同じ町ばかり、そして同じ美術館ばかりを訪問してきた。それもそろそろ脱却しなければならない時期かもしれない。まだまだなのである….。やらねばならない事がたくさんありすぎる。。